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第4回ALK陽性肺腺癌と生きる

役場で先輩だった、松井仁志さんにお話を伺いました。
大柄な体格ですが、柔和な語り口でお話しやすい先輩だった松井さん。
​快くインタビューを引き受けていただき感謝です。

1.病気が判明するまで

上市町役場を退職後、富山短期大学で介護福祉士の資格を取るために健康福祉学科に通学されていた松井さん。1年生の冬の時期でした。家から外に出た時や体を横にした時に、喘息のような激しい咳が出て、止まらなくなっていました。そのうち痰に血が混じり出すようになりました。

そのような状態で学校の健康診断を受けると、深い影が発見され、健康センターから送られてきたはがきに、いくつか考えられうる病名が列挙されていました。

その後検査のため、県立中央病院の内科を受診。

胸のレントゲンや血液検査などの検査を行い、呼吸器の専門医に変わりました。

精密検査をしないと確定はできないものの、「ALK陽性肺腺癌」である可能性が濃厚と言われました。

ALK陽性肺腺癌は、肺腺癌に罹患する人の3%~5%に見られる、たばこを吸わない人や比較的若い人でもなってしまう癌です。
その時右の肺に8cmの腫瘍、右の肺の3分の2が胸水に浸かっている状態でした。
口から細胞をとって検査する精密検査で癌が確定し、背骨と鎖骨に癌が転移していたことが判明しました。
ステージ4のため治療はできず、緩和療法を行っていくことになりました。
ただし、腰に転移している部分については症状が悪化すると下半身麻痺になってしまうので、大きくなったら放射線治療すると告げられました。

 

2.学校の対応


介護福祉士の資格を取るため富山短期大学に通っていた松井さん。

癌だと聞いた時、人にうつす可能性がある病気ではないことがわかり安心しました。

結核等であれば、他の若い学生達に迷惑がかかる可能性もあったからです。

先生に癌であったことを相談すると、松井さんが学習を望むのであればオンラインでの対応も可能だと言ってもらいました。

実際は月に1度の通院で内服治療をするだけで済んだため、学校生活は特に問題なく続けられました。

 

 

3.最初の薬の副作用

最初に内服を開始したのは、分子標的薬で「アレセンサ」という抗がん剤でした。

従来の抗がん剤は、正常な細胞も攻撃し副作用が強く出るため、治療の継続が難しくなる患者さんも多くいました。さらに実際に投与してみないと効果があるのかわからないという側面もありました。

一方で分子標的薬というのは、がん細胞の特定の分子だけを標的にして、増殖や転移を抑える薬です。治療前に標的となる遺伝子やたんぱく質が存在するか確認するため、効果が期待できる患者さんにのみ投与が可能です。

分子標的薬は時間の経過とともに効果が薄まってしまう、従来の抗がん剤と比べ生存期間に大きな差がみられない、薬価が高額といった側面もありますが、患者さんの生活の質(QOL)を保ちながら治療を続けやすい薬という説明を受けました。

アレセンサ服薬後、副作用として湿疹ができやすくなりました。

直毛だった髪も、パーマがかかるように変化しました。

お通じの悪さも感じていましたが、まだ副作用としては軽いほうでした。

アレセンサを服薬して半年、胸から白い影が消えました。

しかしALK陽性肺腺癌は、再発しやすい癌と言われており、薬は継続して飲み続けることになりました。ところが薬の効果は3年ほどで効かなくなるようです。

胸から影が消えて就職活動もできるようになり、介護関係の職場での就職が決定しました。

 

4.学校の卒業と就職及び癌の再発

学校を卒業後、介護福祉士の資格を活かし、介護関係の職場に就職した松井さん。

3カ月ほどで膝の半月板を損傷してしまい、介護現場で働き続けることが困難になってしまいました。

その後は次の職場に転職しましたが、癌であることを伝えたら、新しい人が来るまでの勤務になりました。

がん細胞が作り出す特異なタンパク質や酵素などの物質を血液中で測定し、がんの診断補助や治療効果判定、再発チェックに用いる腫瘍マーカー血液検査があります。

働いているうちに、腫瘍マーカー血液検査の数値があがり続けるように。

基準内ではあったため、加齢や体重増加が要因ではと言われましたが、5以上の数値になると黄色信号です。

 

数値が上がり続けた結果、胸のレントゲンをとると、裏側のほうに大きな影ができており癌の再発が確定。

2025年の5月にアレセンサからローブレナに薬が変更されました。

アレセンサは2年しか松井さんには効かなかったのです。

 

5.2番目の薬の副作用

2番目の治療薬であるローブレナは、1錠2万6千円する薬で、1日1回服薬。

ローブレナを飲むと、中枢神経障害や認知障害が出てきてしまいますが、癌の治療のためには仕方ありません。

頭痛がひどくなり、3日間横になっても眠れない日々が過ぎました。

気がついたら体が限界で、電池が切れたように寝込むこともありました。

布団に入っていても、足がぴくぴくもぞもぞし、何かが這っているような感覚がします。

髪の毛もごわごわしたような感じに変化しました。

少し動いただけでも疲労し、汗がでます。

常に顔と首のあたりが後ろからひっぱられているような不快な感じも。

味覚障害が出たり、足裏に浮腫が出て歩くと痛むようにもなりました。

好きな漫画を読んでいても、主人公の名前が出てこないという認知症状が出るようにもなりました。
副作用が強すぎて、苦しくても生きるためには飲むしかないため、心の中で「悪魔の薬」と思って飲むようになりました。

8月に検査したところ、以前よりも一部の癌が小さくなっているため、ローブレナの服薬は継続と診察されました。

しかしあまりにも薬の副作用がひどいため、主治医に訴えました。

脳に腫瘍があると副作用が出やすいため、サイバーナイフ(体にメスを入れずがんなどの病巣だけをとらえる高精度の定位放射線治療装置)での治療を希望しましたが、腫瘍が小さくなっているため、100gmから75㎎の減薬をすることに。

感覚としては、非常に強い副作用が、中くらい程度にはなりました。

医師からは腎臓にダメージを与えにくい痛み止めであるカロナールを少し処方してもらいましたが、カロナールは松井さんには効かず、甜茶を飲んだら頭の苦しみが中程度から小程度に緩和されることが多いです。

ローブレナはファイザーが作った薬で、5年が経過しても効いている人がいます。

以前、向精神薬も服薬していた経験がある松井さんは、ローブレナの服薬は向精神薬とも似た副作用だなと感じています。

 

以前のアレセンサであれば人生を楽しめましたが、今のローブレナは副作用がひどいため、難しいです。

ローブレナは妊娠を望む女性には使いにくいかもしれません。

子どもが奇形で生まれるのがわかっている薬だからです。

癌の薬は劇薬のため、間違った量を飲むと命の危機になります。

そんな薬を服薬しながらも、明るく自身のことを話してくださりました。

 

6.薬の治療費

1番目のアレセンサは1錠6千円、朝2錠夜2錠服薬しました。1日4錠の服薬で1日2万4千円かかります。

2番目のローブレナは1錠2万6千円で、1日1回服薬。どちらの薬も高額です。
​また副作用である血糖値やコレステロール等も抑える薬も高額になります。

現役世代は7割が保険適用のため、3割が自己負担になります。また、1ヶ月にかかった医療費の合計が、年齢や所得に応じて設定された上限額を超えた場合に、その超えた分が健康保険から払い戻される制度である、高額療養費制度もあります。

高額療養費制度があって助かる一方、高額な分子標的薬も社会保険を圧迫しているのだろうなと罪悪感を持ちながら服薬しているとのこと。

 

毎月医療費が6万以上かかります。

2025年11月からバイトを開始した松井さん。

ローブレナを減薬し、副作用が軽減されたことでようやく働けるようになりました。

5月の再検査で頭に3つの腫瘍ができていましたが、最初にあった背骨と鎖骨の腫瘍は消失しました。

 

主治医からは、一切の治療をやめた時に余命宣告をすると言われています。

余命宣告をされた時に生命保険がもらえます。
「治療やQOL向上に直接使えるため、早く余命宣告してくれ」と主治医に伝えているんだと明るく話される松井さん。

 

7.癌になって変化した生活

癌になったことで、やりたいことをやろうと決意しました。

恐山に行ったり

上市町議会議員選挙に挑戦したり

行きたい場所に行って、やりたいことを行っている日々です。

癌をオープンにしても、癌らしくない癌であったり、松井さん自身の生き方が前向きであるため、癌だと信じてもらえないこともあります。

具体的な治療や薬の副作用を伝えることで、信じてもらいます。

 

親孝行のために、駅弁や珍しいものを購入してプレゼントするように。

癌であることを告げると、お父さんからはまだすぐに死ぬ癌ではなくて良かったと告げられました。癌になったら終わりと感じる人が多い中、最近の医療の発達と分子標的薬をはじめとした薬の利用で長生きできるようになってきています。
​しかし、お母さんには大泣きされました。

ご両親も高齢で弱ってきているので、普段からコミュニケーションを心がけています。

お父さんが白内障で入院した際は、松井さんが親身に付き添いをして手術を乗り切りました。

歩くのもおぼつかないお父さんは、松井さんがいてくれて良かったとその時口にされたそうです。

今後も、ご両親に親孝行をしたいと松井さんは告げられていました。

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-インタビューを終えての所感

役場の先輩だった松井さん。

松井さんはステージ4という癌だと、何と声をかけたらいいかわからないと言われることもあるそうですが、社会と繋がりがあることが嬉しいため、声をかけてもらえるのは嬉しいとおっしゃっていました。インタビューをさせてもらえることで喜んでいただけるのは、私自身嬉しいですし、感謝でいっぱいです。

今回のインタビューで、松井さんのお話をお伺いし、学生にうつる危険性がなくてよかったや親孝行したいという松井さんのやさしい人柄に触れることができました。
大変な副作用と闘いながらも生活されている松井さんの、穏やかな日常を望むとともに、自分にできることは何だろうと考えさせられました。
早期の健康診断の重要性、職場でストレス感じ続けてしまったこと含めてストレスは癌になりやすい大きな原因であることも感じられたそうです。

多くの方に記事を読んでいただき、何か体に異変を感じるようになったら特に、早期に健康診断を受けたり病院に受診していただきたいです。

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