第1回骨形成不全症と生きる
私、ひゃくづかゆきの息子は「骨形成不全症(こつけいせいふぜんしょう)」という骨折しやすい難病を抱えています。第1回は、そんな息子について私自身が記します。
息子が2~3万に1人の難病、「骨形成不全症(こつけいせいふぜんしょう)」だと知ったのは、帝王切開で生まれてきた日の夜でした。
骨形成不全症というのは「骨折しやすい難病」で、有名人では、もののけ姫の歌手の米良美一さんや政治家の原口一博さんなどがいらっしゃいます。
息子は私のお腹の中にいた時や出生時に、複数箇所(鎖骨、腕、肋骨、足)を骨折して生まれてきました。医師からレントゲン写真を見せられた時、こんな小さな身体で、私たち夫婦が経験したことのない骨折の痛みに耐えて、この世に生まれてきてくれたのかと胸が張り裂けそうな思いでした。
息子は、0歳で2回、1歳で5回、その後も1年に1~2回は骨折を繰り返しています。
骨形成不全症は大きく型が4つに分かれており、息子は変形進行型と言われるⅢ型。
Ⅲ型の特徴は以下の4つです。
・重症で、母胎内で既に骨折していることが多く、出生時から骨変形を認める。
・長期生存が可能だが頻回の骨折による骨変形の進行、歩行障害を認める。
・青色強膜あり(成長とともに白色強膜になる)。
・歯の形成不全を認めることが多い。
これらの骨形成不全症に関する情報は診断を受けてすぐ、ネットでの医学記事、骨形成不全症児の子育てをされている方のブログやSNS、骨形成不全症当事者が書かれた著書を購入して読んだりして理解を深めていきました。
最初はどうやって子育てをしていけばいいのか心配でたまりませんでした。しかし看護師の夫や介護士の母、両家の家族、地域の皆様に支えられ、片時も目が離せない時期は脱し、今ではとても人とお話しすることが大好きで、手先の器用な男の子に成長してくれています。
息子が生まれて1か月ほど経ったころ、私の希望で、町内の班長さんの許しを得て、回覧板にお手紙を入れさせてもらいました。手紙には息子と骨形成不全症について記し、散歩や買い物で外に出る際は、気軽に話しかけてほしいというお願いを記入。この手紙のお陰で、ご近所の皆様とのコミュニケーションも円滑にでき、皆様の優しさに触れることが出来ました。私たち夫婦は「息子の病気や障害を隠すのではなく、身近な人たちには早くから知ってもらうことで、助けてもらいやすい環境を創ろう」と考え行動して、良かったと思っています。
あるとき、希望していた保育園に入園を断られてしまい、育休も終わりが見えてきているのにどうしようと途方に暮れました。「障害児の親は働けない」。ネットで見かけたそんな言葉が脳裏をよぎります。でも、私は働きたくて仕方ありませんでした。役場に就職して上市町の魅力を知り、産業課では私なりに町おこしに力を注いできました。町にかけてきた時間と実績、これを失いたくなかったのです。
あるとき、町立の保育所であれば受けいれてもらえるかもしれない、と福祉課から白萩西部保育所を紹介されました。白萩西部保育所の保育士の先生方と面談をし、そして、先生方に息子の主治医のいらっしゃる病院にも集まっていただいて、主治医から病気の特徴や骨折時の対応について説明してもらいました。
白萩西部保育所にとって、大きな決断だったはずです。おむつを替えるだけでも骨折するかもしれない息子。「ガラスの骨の息子」を受け入れてくださった当時の先生方、今大事に保育をしてくださっている先生方、これらの道筋をつくってくださった当時の福祉課職員さんには感謝しかありません。
保育所入所当時、コロナ禍だったため保護者会などで集まることが出来ず、保護者の皆さんにもお手紙を書いて、息子の病気について知っていただきました。手紙を読んだ保護者の方から、あたたかいお返事のお手紙をいただき、とても嬉しかったのが昨日のことのようです。
これまで何度も骨折をしている息子ですが、腕の骨折は生まれてから1度のみで、あとは大腿骨の骨折。息子の骨は大きく湾曲しており、立つと折れる危険性が高いため、保育所や自宅ではハイハイ、外では車椅子で生活しています。
小学校入学に向けて6歳の誕生日前に車いすを用意しました。自分の手で動かせるのが嬉しいようで、よく「自分で漕がせて」と言ってタイヤを回しています。保育所では、ネットで運良く手に入った外国製の幼児用車椅子を使って、他の子達と駆け回って遊んでいます。
骨折しやすい息子の子育ては、0歳~現在に至るまで工夫の連続でした。手に乗せて抱っこすると危ないと思われた時期には、巨大なスポンジタイプのクッションに乗せて抱っこしてお風呂に入れていました。また、お座りが出来るようになった時には倒れても骨折しないよう周りを囲むようにクッションを置いていました。今も骨折して寝たきり状態の時は、切り開いた牛乳パックで便を取ったり、尿瓶でおしっこを取ったりするなど、皆さんが「育児」という言葉からは連想されないだろうアイテムを使うこともあります。
これからも様々な工夫が必要な場面は出てくると思いますが、今は本人が感情の意思表示や状況説明できるようになってきているので、多くの部分で助けられています。
本人は歩きたがっていますが、今すぐ手術は嫌だと言っています。
Instagramで同じ病気の子を持つ家庭の状況を見ていますが、多くの家庭が骨に髄内釘を入れて強度を図る骨切の手術をされているようです。
うちの家庭も、1冊の本に出会わなかったら手術をしていたでしょう。
安積遊歩さんの「いのちに贈る超自立論―すべてのからだは百点満点」という本は、当事者視点で骨形成不全症について書かれているおすすめの1冊。
悩ましい本に出会ったなと思う反面、悩めることは嬉しいことだとも思っています。
親だからといって、子どもの身体を自由にしていいのか。
夫婦で話し合い、子どもの主張を聞いてから、決めるべきだろうという結論になりました。
息子は歩きたがっています。
保育所に行っている彼は、他の子達が歩いて走り回っているのを見て、悔しい気持ちをたくさん感じていることでしょう。
同じ保育所に体幹を保持できない子もいたし、富山型デイサービスの利用を通じ、自分以外にもいろんな病気の子がいるというのはわかっています。
歩きたいなら、手術をしたほうが可能性が高まるのは間違いありませんが、絶対に歩けるようになるわけではないのが、手術判断の難しいところ。
息子が手術は嫌だと言っている理由は、手術は怖いし、半年ほぼ離れて暮らさなければいけないからです。
6歳の子に聞くのが酷なのかもしれません。
小学生になったらまた考えようというのが現在の状況。
同じ親の立場でも、SNSで見ると、手術した(させた)という投稿が多く、手術容認、推進派の方も多いと感じています。
恐らく我が家のように、手術に対して慎重派はマイノリティです。
現代の医療の在り方を見る限り、そうなるのだろうとも感じています。
手術した家庭の選択を、否定したいわけではありません。
ただ医者にすすめられたから、という理由だけではなく、当事者の話をいろいろ聞いた上で結論は出してもいいのではないかと思います。
少数派の意見にも耳を傾けて、自分の中で答えを探していきたい。
我が家の状況はそうなんだな、と見守ってほしい。
正解なんてなくても、悩み続ける道を模索しています。